lao_20th
88/108

挿図12 禅定印坐像ルアンパバーン王宮博物館蔵挿図13a 禅定印坐像      ワット・タートルアン ルアンパバーン  13b 禅定印坐像(13a)3D画像(出典:身延山大学)挿図14 禅定印坐像ルアンパバーン王宮博物館蔵86ルアンパバーン王宮博物館蔵挿図15 禅定印坐像    3D画像(出典:身延山大学)ワット・タートルアン ルアンパバーン破損が著しく、頬は不自然に細く、口元も均整がとれていないため後世に手が加えられていると考えられる。前髪飾りがなく、偏袒右肩で衣(サンカーティ)が左肩にあること、光背の形状などバイヨン期の青銅仏の特徴を持つ。 ヴィエンチャンにあるのと同名のワット・タートルアンの仏堂本尊仏裏には大小仏像が集められているが、その中に灰色砂岩製のナーガ仏坐像(挿図13a,13b)がある。前髪飾りを着けているがその上部は欠損している。前髪飾りの形状はクメール美術では、上に向かって広がっていくのが通例だが、この像では円筒形に近く、額上部では幾分内側に傾斜していることが3D画像からも確認できる。このような特徴はスコータイ朝期のヒンドゥー神像群に顕著な特徴であることを指摘しておきたい。幅広の首飾りや直視する目、微笑みのない点は、アンコールワット期の形式を継承している。裳の腰の部分が腹部前方で低く、後方に向かって高くなり、腹部は多少張り出している。以上のようにこの像はアンコールワット期のナーガ仏を基調としながら、バイヨン期の影響も混在し、さらにスコータイ朝の影響があったとすると年代は下がり、13世紀後半から14世紀の作品と考えられる。 王宮にはこのナーガ仏と同じくアンコールワット期の宝冠ナーガ仏を基調とした宝冠仏(挿図14)が収蔵されている。台座を見るとナーガ仏ではないらしい。宝冠・胸飾り・腕釧・耳飾りがその特徴だが、本来円形であるはずの前髪飾りは額の両端と耳の後ろで折れ曲がり、八角形に見える。類例はヴィエンチャンのワット・シーサゲートでも見られた。弧を描く眉毛も新しい特徴である。偏袒右肩の左肩からは幅広の布(サンカーティ)が下がり、その上から首飾りつけている。このようなアンコールワット期とバイヨン期の特徴の混在は、バンテアイクデイ出土の仏像群にすでに見られる。全体は朱が塗られ、その上に漆塗膜層と箔の跡が残り、漆箔は後世の加飾修正であるとわか

元のページ  ../index.html#88

このブックを見る