lao_20th
64/108

629 住宅対象以外の事務所荒らし、倉庫荒らしにも少数含まれているかも知れないが、所有者が届け出ていない、あるいは盗難自体を認知していない状況が他のネット情報から窺え、これがこの問題を複雑にしている。10 個人のブログの中には2012年発生の対馬仏像盗難事件に絡んで政治的な主張が強いものも見受けられる。11 2013年11月14日付け。2021年5月19日閲覧。12 更新日は2018年12月27日とある。2021年5月19日閲覧。13 2009年8月4日表示とある。2021年5月19日閲覧。14 2009年9月12日表示とある。2021年5月19日閲覧。が見出されるものと期待できる。 文化庁の調査資料等についての検討はここまでとして、以下、他の仏像盗難情報を見る。 警察庁は毎年「刑法犯に関する統計資料」を公表しており、刑法犯全般にわたり詳細に分析していて年次的・地域的な動向が分かる。しかし、残念ながら仏像や社寺という項目はなく、恐らく、窃盗犯>住宅対象>侵入窃盗>空き巣の統計中に大半は含まれているのだろうとまでは推定できるが、例えば2018年度「資料」によれば、空き巣事件22、141件のうちどれだけを社寺の仏像盗難が占めるのか見当もつかない9。 ネット上にはこのほか市町村教育委員会、新聞社・放送局などのメディア、NPOその他の文化情報プラットフォーム、警備施設関係企業、仏像に興味を持つマニア的な個人などから発信された各種の仏像盗難情報がある。前二者のものはオリジナルな情報と見て良いだろうが、後三者のものは基本的に転載情報なのでその出典を辿りにくい面がある10。 いずれにしてもこれらの情報は地域性や興味の所在による偏りが強く、全体的な動向をつかむには不向きな面もあるが、具体的で有益な情報も少なくないので次に見ていく。 中で示唆に富んでいるのは滋賀県長浜市市民協同部歴史遺産課の「仏像の盗難」というページ11で、寺院の要望・承諾を得たうえで2012年6月に市内で相次いで発生した事件4件(うち仏像5体、他は掛け軸及び厨子、いずれも未指定)の盗難情報を載せて情報提供を募っている。このページの中で、「写真や記録がなく捜査のおよびにくい未指定文化財が中心」であること、「現実に、盗難に2.警察庁資料から3.市町村教育委員会発の情報からあった仏像が発見されても、それが自分のところの仏像かどうかわからないというケースが数多く見受けられます。極端な場合、秘仏ゆえに所有者ですら姿を見たことがなく、盗まれたことに気付いていないことも」あると問題点を指摘したうえで、「仏像の記録のしかた」という別ページで簡単な記録方法として、仏像の写真を撮ることと法量測定とを所有者に呼び掛けている。この対策だけで仏像盗難を防ぐことに直結するとは言えないかも知れないが、すぐ実行できる対策である上に、相当有効なものではないかと思われるので、次のように指摘できるだろう。オ:国や地方自治体が把握しきれていない(悉皆調査が実施できるならそれに越したことはないが)未指定文化財である仏像が盗難被害の中心であること、一方、社寺にとっては指定の如何に関わらず貴重な信仰の拠り所であることを踏まえると、所有者自身(氏子・檀家、地域コミュニティなども含めて)が積極的に仏像の記録作業を進めることが適切ではないかと考えられる。 なお、長浜市の例は2012年発生なので先に見た文化庁の資料には載っていない。同じように福島県河沼郡会津坂下町教育委員会ホームページの仏像盗難(2件5体)情報も12載っていない。文化庁の「~取り戻そう! みんなの文化財~」は大変良い企画なので未解決事件の場合は遡って掲載するなどして充実を図ってほしいところである。 メディアも折に触れて仏像盗難事件を報道しており、ネット上で見ることができるものがある。例えば、NHK「クローズアップ現代+ 仏像盗難~地域の“宝”どう守る~13」では国内外の窃盗団、および奈良県の「文化財保安官」が取り上げられた。東海テレビ「年に1度の地蔵祭で『開けたら空っぽ』��子供を守る“地蔵菩薩”が盗難鎌倉時代作か14」は愛知県豊橋市嵩山町での盗難事件について愛知県警によるとして「盗まれた仏像は個人的な売買やオークション・サイトなどで取引されることが多い」と書かれている。「仏像のコ4.新聞社・放送局などのメディア情報から

元のページ  ../index.html#64

このブックを見る