写真 ワット・ヴィスンナラート本堂内(筆者撮影)54第一章 仏像の盗難防止対策 ―主として施設および技術面からCOVID-19流行の影響でラオスにおいては2021年秋現在までほぼ中断している。 本論に入る前に「仏像」という用語についてお断りをしておきたい。日本の宗教彫刻では仏像が代表的なものではあるが、神像という別ジャンルがあり、さらに神仏習合像、肖像彫刻、狛犬・獅子頭、尊名不詳の野の石仏などもある。まことに多様であるが、盗難という観点から見るとこれらをいちいち区別することにあまり意味はないと考えるので便宜的に全てを仏像と括って表現することにする(国指定文化財の美術工芸品の種別にある「彫刻」がほぼ本稿での「仏像」に相当する)。ラオスの場合はこの点ではほぼ文字通りに仏陀の像なので仏像と表現して問題はないと思われる。ただし、日本においては木彫仏の数が圧倒的であるのに対し、ラオスの場合は木彫仏が優勢ではあるもののブロンズ像、塑像(ラオス式モルタルなどによる)、ガラス像、水晶その他の貴石・宝石像など多様である。両国ともに大きさには大小がある。1.機械的防犯対策 部外者が敷地内に入りにくい施設構造、窓には面格子、出入口には厳重な施錠、内外に複数の防犯監視カメラを設置して画像を記録し、警察や警備会社等に接続された警報装置を必要箇所全てに設置。一般的にはこれらが盗難防止の決定打とされる。しかし、導入費・維持費がかさむことと何よりシステムの運用が最終的には所有者・管理者次第であり、機器の信頼性がどれだけ向上しても人為的ミスその他の原因で適切に作動しないことが考えられる。そして、場合によっては高価な監視カメラシステム自体が盗難の対象ともなる。博物館的施設以外では経済的に余裕のある社寺に限られるだろう。2.人による見廻り・警備 最も古くからの防犯対策。警備員を雇用して責任をもって防犯に当たらせることは人手が確保しやすい地域では安上がりで効果的だが、警備員はおろか警察・軍隊まで充分信頼できないという地域もある。日本の多くの社寺のように家族で守るというのならかなり安定的だが、僧侶が一定期間だけ寺院で生活するパターンの多い東南アジアの国々では防犯体制が持続できるとは限らない。そ
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