ラオス仏像修復サポーターズクラブ事務局長BAC仏教救援センター理事長静岡 感應寺寄住3 1995年、身延山大学がラオスの仏像修復に参加されるとのことで、以前よりラオスで校舎建設や医療活動を続けていたBAC仏教救援センターがラオス政府との橋渡しをさせていただいてから30年近い歳月が流れました。 2001年の本格的な活動開始以降、今や押しも押されもせぬ大きな存在となったラオスでの活動が、更に発展しながら続けられていることは、ご縁のある私としても大いなる喜びです。 ラオスに限らず、上座部仏教国における仏像が釈尊そのものに比するほどの存在であることは、ラオスを初めとするインドシナ諸国で40年間に亘って続けている活動で見聞きしております。まさに人々の生活の中心にあるといっても良いでしょう。その仏像が盗難や破壊あるいは自然崩壊という状況にあることは、ラオス国民にとって大きな悲しみでした。 ラオスは、1975年の社会主義革命からようやく半世紀を迎えようとしているにすぎません。まさに発展途上にあります。特にフランスの植民地時代には僅かに2パーセントだった識字率がBACを含む諸外国のNGOやNPOの教育振興支援によって回復し、経済も発展しつつありますが、未だにLLDC(後発発展途上国)の一員であり、自力で文化遺産の保護ができるまでには至っていません。 よしんば経済が潤ったとしても、それは一方で国民の生活格差を広げることにもなり、新たな生活困窮者を生むことになります。既に、30年前には見なかったホームレスや、ストリートチルドレンが現れるようになりました。この、現実の世界で苦しんでいる人たちを物質的に支援するのがBACのような国際協力団体だとすれば、身延山大学が進めている仏像修復活動は「心」を支える活動であろうと思います。仏教が「心」の支えになっているラオスは、私たちこそが守らなければなりません。その貴重な活動を身延山が担っていることの重要性をもっと深く認識したいものです。 ここに至るまでには身延山久遠寺内野日総法主猊下をはじめ、持田貫宣身延山大学学長、池上要靖教授以下大学関係者のご指導と、柳本伊左雄特任教授の卓越した知識と技術そして学生たちの献身的な努力があったことは言うまでもありません。 コロナ禍で活動が低迷しているなか、祈るだけではない仏教実践の先駆者としての活動を続け、「心の寶」を守る身延山大学の仏像修復活動に、多くの皆様のご理解とご協力を切望しております。伊 藤 佳 通プロジェクト20周年に寄せて
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