2身延山学園理事長身延山大学学長 身延山大学におけるラオス世界遺産仏像修復事業が20周年を迎え、爰にこれまでの活動と成果を取りまとめ、皆様にご報告申し上げるとともに、20年の永きに亘る多くの皆様の温かいご支援に対する感謝を申し述べ、そして今後の当事業発展に資するべく、記念誌を発行することとなりました。 1995年、BAC仏教救援センター理事長・伊藤佳通師により、世界文化遺産に指定されているラオス・ルアンパバーン地域の寺院群において、歴史的価値が高い多くの仏像が政治的混乱により荒廃の危機にあり、修復支援が必要であるとの報告を受けました。身延山大学では、仏像制作修復室の柳本伊左雄特任教授を中心とした「ラオス世界遺産仏像修復プロジェクト」を発足させ、2001年9月、ラオス国政府との調印を経て仏像修復事業が始まりました。 プロジェクトは、世界遺産地域内の寺院調査や仏像調査から始まり、これにより1,174体もの仏像の存在が明らかになり、「全寺院仏像基本台帳」が作成され、世界に誇れる成果を上げることが出来ました。 この基本台帳をもとに、本格的な仏像修復に着手致しましたが、ラオスには仏像を修復するという概念が浸透しておらず、勿論その技術もありません。また、修復には人員や技術、資金はもとより、寺院の協力、修復保全に対する人々の理解が必要であり、将来に亘って多くの仏像を守っていくには、現地の技術者育成が必須となります。 日本では活動資金を募るべく、日蓮宗大本山北山本門寺貫首旭日重猊下を会長とする「ラオス仏像修復サポーターズクラブ」が発足され、多くの会員の皆様より浄財が寄せられ、その総額は899万円(2011年~2020年迄)にのぼりました。爰に改めて御礼申し上げる次第であります。また、国際交流基金や仏教伝道協会をはじめ、多くの皆様からのご支援にも深甚の感謝を述べるものであります。 一方現地では、ラオス国立美術工芸大学、ルアンパバーン仏教連盟、僧侶の皆様のご協力により修復事業が進められました。同時に、修復室の公開により仏像修復に対する啓蒙活動、修復技術者の育成、現地調達可能な修復資材の研究等にも力を注ぎ、その活動はラオス国内に於いても高い評価を得ております。 2020年2月には、この活動が20周年を迎えるに当たり、日本より小衲を含め総勢21名がラオスへ渡航し、現地の僧侶とともに記念法要を奉行し、今後の更なる事業発展を祈念致しました。 現在までに修復を完了した仏像は77体であり、全ての仏像を修復するには長い道のりとなりますが、一人でも多くの現地技術者を育て、人々の理解を得ながら活動を継続して参りたいと存じます。そして、この修復活動により、ラオスの素晴らしい世界遺産と仏教文化が世界に発信され、ラオスの発展に繋がると信じるものであります。 結びに、これまで永年に亘りご支援を頂いた全ての皆様に衷心より御礼申し上げるとともに、当事業に携わる本校教職員の尽力に対しても敬意と感謝を捧げたいと存じます。修復事業はもとより、日本とラオスの友好交流発展のため、今後とも温かいご支援をお願い申し上げ、記念誌発行のご挨拶と致します。持 田 貫 宣御 挨 拶
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