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図12 試作したカモク図13 板状のカモクを干している様子236JillEmmaStrothman,MinoruSuzuki,ViraivanPhonsamai:JournalofInternationalInstituteforNichirenBuddhism,2,1(2018)割合は大きい。一方、長年による割れの発生確率を低くする必要があり、可能な限りキタオの混合割合は小さくしたい。つまり、加熱重合漆の重合をより進め粘度を高くして、キタオの混合割合を小さくすることが望ましい。そこで図8で得た熱重合漆(固形分100wt%を確認している)を用い、これにキタオを混練してカモクの製造をいくつか試みている。例として、まずパテ用のカモクについては、この熱重合漆に常温で少しずつキタオを加え、箆でしっかり混練しながらパテに適した粘度まで加えた。このときのキタオの濃度は50wt%であった。一方、螺髪等の成形材として使用するカモクについてはキタオの混練が容易なように、熱重合漆を再度加熱しながら粘度を下げ(電磁調理器上のデジタル目盛100℃)、キタオを箆でしっかり混練し加えた。冷却後の粘度を見ながら、螺髪等に適した粘度までキタオを加えたときのキタオの濃度は、66wt%であった。カモクの配合について、Jillら6は、パテ等に使用するカモクにおいてはキタオの濃度は70~72wt%、螺髪用に使用するカモクにおいては72~73wt%と報告している(なお、熱重合漆の固形分が不明のため、キタオの濃度は正確な固形分比ではなく、目安として考える)。また、先に述べた我々が試みた仏像修復所でのキタオの濃度は、常温混合で71wt%程度であり、Jillらの報告と一致している。例として示した熱重合漆は、電磁調理器のスタート温度を120℃に設定し、40分間かけて160℃に設定温度を上げ、その後160℃で30分加熱したものである。この漆は、現地で通常使用する熱重合漆に比べ重合が進み粘度が高いと考えられ、Jillらの報告や我々が仏像修復所で試みたカモクに比べ、キタオの濃度が低くなっている。つまり、経時による割れの発生確率がより低いと考えられる。また、キタオの濃度66wt%のカモクの乾燥性を確認するため、シリコン型(凹形状10mm×7mm×5mm)にこのカモクを押し込んで立体物を製造し、離型後これを常温に放置した(2019年9月)。その結果、数日で表層はベトベト感が無くなり、約2~3週間でしっかり乾燥していたが、指で強く押すとまだ内部はやや柔らかい状態であった。約5~6週間後は、内部もほとんど固まった様子であった。このときの様子を図12に示す。一方、キタオの濃度50wt%のカモクでは、約1㎜の厚みにおいて、これより1~2週間ほど早い乾燥性が認められた。 以上の様に、しっかりと乾燥しキタオの濃度が低いカモクを製造することが出来ることを確認できた。さらに、堆錦技法を参考にして、カモクを叩くことによる効果やロール等で板状のカモクを作成し、これを吊り下げて、より表面を空気に触れさせた後再び練ることの効果を検証することも必要であると考える。つまり、カモクの「叩く⇋干す⇋練る」を繰り返し、重合の促進と乾燥性の向上を確認したい。カモクを板状に延ばし干している状態の様子を図13に示す。

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