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図8 熱重合漆製造の加熱スケジュール214.カモク製造実験 ラオス(ルアンパバーン国立王宮博物館仏像修復所)での試みを基に、現在カモクの製造実験を行っている。ゴールは、これまでのカモクを改善し乾燥性や割れの防止を向上させた、①カモク用熱重合漆の製造方法の確立、②熱重合漆とキタオの混練方法の確立、③熱重合漆とキタオの用途別による配合比の決定、④カモク製造方法(①~③)のマニュアル化である。4-1.カモク用漆について 3-1で述べたように、カモク用の漆はタイから輸入している。この漆は溶剤臭がしており、原料漆の粘度が高いために、塗りとして使用する粘度に調整するために溶剤で希釈していると考えられる。またこの漆が原産地のミャンマー、もしくは輸入元のタイで加熱されているのか否かは定かでない。つまり、履歴の分からない性質が一定しない漆を使用している。このため、製造したカモクについても一定の製造方法を定めることが出来ず、また性能も異なる。そこで、まず安定した原料漆の輸入を考えなければならない。鈴鹿4は、過去に存在したラオスの漆は、ベトナム系漆やタイ・ミャンマー・カンボジア系漆のいずれもあったことを報告しているので、過去のカモクはいずれの漆が使用されていてもおかしくはない。また、ベトナム系漆とミャンマー系漆は、組成や性質も異なる。現在のルアンパバーン国立王宮博物館仏像修復所ではタイ経由のミャンマー産漆を使用しているので、いわば使い慣れた漆の方が作業上好都合と考えた。 そこで、素性のわかったミャンマー産漆を生漆のまま入手し、自らで加熱し、安定した品質のカモク用漆を製造することが必要となる。ミャンマー産生漆入手には、漆生産地のラオス国境隣接のミャンマー・シャン州から直接入手するか、パガン漆器産地の漆屋から入手するかの方法が考えられる。さらには、タイ・チェンマイの漆屋から安定したミャンマー産漆を入手する方法もある。いずれにせよ、素性の分かったミャンマー生漆を輸入するルートを作らなければならない。4-2.カモク用漆の加熱について これまでのカモクは、割れの発生が認められる場合があるという。これは、成形材料として利用するときの粘度にカモクを調製した場合、おそらくキタオの濃度が大きく、つまりバインダーとなる熱重合漆が少ないためと考えられる。これには、現状よりもさらに漆を加熱し、熱重合漆の重合度を上げ粘度を高くして、相対的にキタオの濃度を低下させる方法が考えられる。そこで、2019年の仏像修復所での試みを基に、加熱のスケジュールをいくつか試みている。実験は仏像修復所で再現が図れるように、電磁調理器上にフライパンを置き、15gの漆を入れ加熱をすることにより製造している。 加熱スケジュールの一例を図8に示す。使用漆は、先に述べたように、素性が明確であり、ラオスの技術者が使用しやすいと考えられるミャンマー産生漆を使用した。平成30年(2018年)9月にミャンマーのシャン州インレー湖のナンパンの市場で購入したものである。水分14.9%、乾燥時間は20℃80%RH雰囲気で約30時間(乾燥膜厚約30μm)。まず、電磁調理器のスタート温度をデジタル目盛120℃に設定し、40分間かけて160℃に設定温度を上げ、その後160℃で30分加熱した。加熱中は常に木箆で漆を攪拌している。このときの放射温度計測定による漆の表面温度は、デジタル目盛温度~+20℃程度であった。このようにして製造した熱重合漆について、10分ごとにサンプリングを行い、箆でPP板に塗布した。乾燥時間等の様子を表2

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