K8.5図4 カモク用漆表1 キタオのエネルギー分散型蛍光X線装置分析結果19図5 カモク用キタオ3 .ラオス(ルアンパバーン国立王宮博物館仏像修復所)での試み同じと考えることが出来る。カモクは、これに多量の充填剤としてのキタオを混練する。すなわち、カモクはラッカーゼによらない酸化重合による非常にゆっくりとした硬化機構で、充填剤を多量に含有し、従って酸素も内部まで行き届き、厚塗りや成形物としての使用が可能となる。さらにこれらの反応は、高温なほど促進され、従って気候面で恵まれた地域の技法として、ラオスのカモクに限らず、沖縄の堆錦、ミャンマーのタヨーが生まれたものと考える。 令和元年(2019年)3月1日から3月7日の滞在中、まず、仏像修復所の技術者の方々に漆の加熱方法やカモクの作り方、カモクの使用方法等を見せて頂いた。そしてカモクのイメージをしっかりと私の中に植え付けた。3-1.使用材料 使用している漆を図4に、キタオを図5示す。漆はタイより輸入しているとのことであった。固形分を調べると(加熱前後の重量比)約85%であった。通常漆の揮発成分は水のみであるが、この漆は溶剤臭がした。帰国後、ラベル等からこの漆を調査した。その結果、ミャンマー・シャン州産の漆であり、輸入したタイの業者が小分けして溶剤で薄めて販売しているものと分かった。熱分解GC/MSで分析したところ、確かに主成分をチチオールとする漆であった。溶剤希釈は原材料の漆の粘度が高いためであると考えたられるが、この漆が加熱されているのか否かは定かでなかった。また、仏像修復所にある同じラベルの缶の漆は、粘度等もこれとは異なり、カモクに使用する原材料の漆が一定の性質でないことが分かった。一方キタオは安定した性質の材料として供給されているという。キタオをエネルギー分散型蛍光X線装置にて元素分析を行った。その結果を表1に示す。Caが非常に多い灰分となっている。キタオ3-2.漆の加熱 漆の加熱方法、つまり熱重合漆の製造法である。橘らの報告1では、鍋に漆を入れかき混ぜながら5分煮るとの記述あるが、仕込み量や加熱温度等具体的な方法は明確でない。そこで、修復所の技術者が製造する方法やその粘度の様子を観察し、ここからいくつかの製造条件を試してみた。その一例を下記に示す(表記温度は放射温度計測定による漆の表面温度)。Ca90.4Fe0.3
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