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ワット・ビスン No.28 ブロンズ仏像修復風景ワット・ビスン No.52 木彫仏像修復完成12身延山大学仏教学部 特任教授はじめに 世界遺産ラオス、ルアンパパーン仏像修復プロジェクトは2021年現在、22回目を迎えた。 当プロジェクトでは2000年3月以来、今日に至るまで、いくつかの新企画を行ってきた。とりわけ近年の三次元測定機導入は、新たな展開が期待される。これに伴い、その他測定機具の充実も図られ、修復を行う上で基礎的な資料の作成等が充実してきた。 また、プロジェクト自体の周知にも手応えが感じられ、結果として、身延山大学・ビエンチャン工芸学校以外からの協力が実現した。日本国内からは帝京大学の鈴木稔特任教授、同近藤直樹専任講師、京都産業技術研究所大藪泰研究フェロー、同橘洋一首席研究員の参加があった。海外からはサイアム大学(タイ)高田知仁教授の参加が有り、タイに研究機関を置くピータースキリング氏等に協力を依頼した所、仏像の銘文調査に係る助言、並びにインドシナを中心とした銘文専門家の紹介をしていただいた。これらの事は、昨今のプロジェクト最大の成果であり、今後は、より国際的な広がりが期待できる。 仏像修復の現場では、国際交流基金の助言に沿って、現地ルアンパパーン工芸学校から新たに学生3人の参加を受け入れた。これは、ラオス仏像修復の裾野を広げる意味でも新たなスタートと言える。 仏像を素材別に見ていくと、木彫仏像は個体数に占める割合が最も多く、修復の主軸になってくる。こうした中、最近のビエンチャン工芸学校スタッフの技術力に大幅な向上が見られる事からも、ラオス独自の修復体制(ラオススタッフ単独での修復活動)の実現が期待される。 一方、ブロンズ仏像については、設備コストが高いため、大型の仏像修復が困難だった。現在、当プロジェクトの援助により最低限の設備が整いつつあり、ようやく本格的な鋳造が始められる。しかしブロンズ仏像については、盗難が多発しており、修復を行う以前にセキュリティの問題を解決する必要が生じている。 本来セキュリティについては、我々のプロジェクトの範囲外であるが、盗難についての調査が他に行われておらず、いつしか仏像の設置状況の調査と並行して我々が行わざるを得なくなったのが現状である。さらに近年では、重要なブロンズ仏像の盗難が頻発しており、調査の結果を見るまでもなく異常事態である。柳本伊左雄ラオス世界遺産仏像修復プロジェクト20年のあゆみ

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